私のベースは医者であり、ものの見方や考え方は司馬正太郎さんの著作を通じて学んだ。
趣味が囲碁であり、山歩きをするようになって樹木が好きになった。
だから気楽な分だけエッセーを書くことに苦痛は感じなかった。
能力の問題やといえばそれだけだが、あまり熱意がなかったのか医学論文はあまり書かなかった。
エッセーとは元来思索的な散文であるから、自分の体験をその時の思いに乗せて綴ったらいいだけである。
「司馬遼太郎の樹木を旅する」と題したが、医学の雑誌の随想欄にシリーズで載せてもらったので、大好きな司馬遼太郎さんの「街道をゆく」の中に出ている木を見て回り樹木から広がる体験や思索をメディカルエッセー風に書いたのが本エッセー集である。
おそらく同じテーマを与えられて書きだしたら他の人なら別の流れのエッセーになっていくのであろうが、必然的に私を成り立たせているそれぞれのパーツを組み合わせたものになっている。
不勉強やひとりよがりな主張もあるかもしれないが、正確を期す固い医学論文とは違うエッセーという点で大目に見ていただけたらと思う。