大阪府八尾市の救急病院。地下鉄谷町線の長原駅または八尾南駅より徒歩10分。脳神経外科、整形外科、外科、内科、リウマチ科、リハビリテーション科

 

いわゆる『痔(ぢ)』で困っている方は非常に多いのに、『肛門科』として専門に診察が受けられる病院は限られています。 当院では、『痔(ぢ)』でお困りの方のお役に立てるように、『肛門外科外来』を開始しました。 当院の肛門外科外来は、院長の渡瀬と、よどがわ内科クリニック副院長の野田が診察を担当します。

お尻が痛い、出血がある、イボが出ているなどのお悩みはありませんか?


渡瀬医師は、当院赴任前は多根総合病院の日帰り手術センター長・副院長を務め、鼠径ヘルニアだけでなく、肛門疾患の経験も豊富です。

野田医師は、関西で数少ない女性の肛門外科専門医であり、肛門外科の権威、岡 空達夫先生、齋藤徹先生の下で学び、大阪中央病院、大阪北逓信病院に勤務していました。

当院では内痔核に対して『痛みのほとんどないジオンによる硬化療法』を行っています。

日本語は表現が豊かなので、『脱肛』と言っても、はれている、ふくれている、飛び出している、できものがある、など、いろいろな訴えで受診されますし、自分自身の目で見える部位ではないため、違和感があるものの、実際にどうなっているのか自分でもよく分からない、という方も多いです。

インターネットを見ると、非常に良い解説、とても参考になる体験談などもある一方で、残念ながら、古い情報(昔の治療法)や偏った知識での解説、誤った診断・治療を受けてしまっている体験談なども見られます。

少しでも共通する症状があると、本当は違う別の病気なのに、その記事と同じ状態と思い込んで一喜一憂してしまうこともあると思います。

肛門という部位のため、他人に相談しにくく、インターネットで誤った情報も氾濫していることから、受診するには勇気がいるかも知れませんが、まずは気軽に診察に来て頂ければと思います。

『肛門外科』という名称で、『外科=手術』というイメージがあるかも知れませんが、絶対に手術をするというわけではなく、本当に必要な時にはお勧めし、手術以外の治療で良くなるものなどは、それぞれに合った治療法をお勧めします。

困っている症状、心配な症状があれば、実際に診察をさせて頂いた上で、必要な検査や治療をご説明、ご提案いたします。
 

 
 

(1)いぼ痔(痔核)






いぼ痔(痔核)

『いぼ』が出来ている、はれている、ふくらんできる、何か出来ている、飛び出している、といった症状や、出血、痛み、かゆみ、下着の汚れなどの症状が見られますが、程度が軽い場合は、自覚症状はなく、検診(直腸診や大腸内視鏡検査)などで指摘されて初めて気付く方もおられます。

本来は痔核のことを指しますが、直腸粘膜脱や直腸脱、皮垂、見張りイボ、肛門ポリープなどでも、同じような症状が出ることがあります。

解剖的な位置、成分などにより、あまり痛くないものと痛みの強いもの、あまり出血しないものや出血しやすいものなどがあります。

軽い痛みをかゆみと感じる場合や、直腸粘液が肛門付近に付着することでかゆくなる場合、あるいは、脱出や下着の汚れを気にし過ぎで、肛門を清潔にし過ぎ(温水洗浄便座で洗い過ぎ、トイレットペーパーでふき過ぎ)て、乾燥してかゆくなる場合などもあります。

ただ、いぼ痔が邪魔をして便が出ない、ということは滅多にありません。

基本的には良性疾患で、すぐに生命に危険が及ぶ病気ではないため、手術をして根治しなければならない、というものではありませんが、いぼ痔と思い込んでいて、実は大腸癌だった、ということや、出血を何年も放置していて、輸血が必要なくらい貧血が進むということもあります。

また、『嵌頓(かんとん)』と呼ばれる、痔核が飛び出したまま戻らず、肛門に絞め付けられて腐ってくるという状態になると、かなりの激痛を伴い、難しい手術になることがあるので注意が必要です。

軟膏の塗布や薬の内服で、気にならないくらいまで改善する方もおられますし、切除の手術ではなく、注射で治せる(ジオン注による硬化療法)ものもあります。

また、正式な切除だけでなく、結紮で血流を遮断し、痔をしぼませるという方法もあり、切除よりも手術後の痛みや術後出血の合併症も少なくなります。

 
 
 
 
 


(2)あな痔




あな痔

肛門(直腸)内から皮膚に細いトンネルが出来るもので、痔瘻のことを指しますが、肛門周囲膿瘍、直腸周囲膿瘍や、裂肛(きれ痔)を伴う場合もあります。

トンネルの入口と出口が開通している場合は、膿が出る(血が混じることもある)、下着が汚れる、という症状になりますが、出口が皮膚に開通せず、洞窟のような状態で身体の中で止まっていると痛くなったり、はれたり、熱が出たり、赤くなったりします。

完成した痔瘻は手術でしか治せませんが、出来たばかりの新しい痔瘻の場合は、適切な処置(膿を抜く=切開排膿)や抗生物質の内服で完治することもあります。

目安は発生してから1ヵ月以内で、手術なしで処置や内服のみで完治する確率は30%前後です。

手術方法は主に3通りで、範囲が小さく浅い痔瘻は切除(レイオープン)、あるいはトンネルを繰り抜いて縫って閉鎖する方法(くり抜き)の2通り、広範囲あるいは痔瘻が曲がりくねっている時は、必要な部分のみ切除して、医療用の輪ゴムのようなチューブを留置して少しずつ直していく方法(シートン法)となります。
 

 
 
 

(3)きれ痔



きれ痔

裂肛のことを指しますが、何度も繰り返すと、その付近の組織が反応して、見張りイボとよばれる皮膚の突起や、肛門ポリープを伴うこともあります。

また、痔核が動くことで、牽引されて出来る裂肛もあります。

直腸・肛門の血流は豊富で、トイレの便座に座ると力がかかるため、数mmのキズでも派手に出血することがあります。

また、数mmでも、肛門は寝ても座っても圧力がかかる部位であり、排便時には肛門が拡張し、できたキズを広げるように動くため、強い痛みを感じます。

無治療でも、数日~数週間で自然に治癒することが多いのですが、軟膏の塗布や薬の内服で、治癒を早められます。

手術が必要になることは少ないのですが、肛門が狭いことで裂肛が出来やすくなっている場合や、痔核の動きで牽引して出来ている場合など、投薬だけで改善が乏しい時は手術を検討します。

 

 
 
 

(4)その他



 

他にも肛門の病気はいろいろあります。

詳細は、『よくわかる大腸肛門科』のホームページに非常によくまとめられており、監修をされている辻中病院 柏の葉の赤木 一成先生より、ホームページのリンクの許可を頂いております。



 
 

▼赤木先生の『よくわかる大腸肛門科』ページへ

よくわかる肛門科 

 

 

▼ジオン療法の効果

ジオン療法の効果
 
 
 
 
 

▼ジオン療法の短所 長所

 

長所 ・痛みが少ない ・手術翌日には効果を実感でき、仕事への復帰も可能
  
短所 ・再発することがある ・術後直腸潰瘍形成による遅発生出血

 


ジオンによる痔核注射療法は、従来、手術が選択された脱出を伴う内痔核または内外痔核に対して治療効果が期待できます。

ジオンは、硫酸アルミニウムカリウム水和物及びタンニン酸を有効成分とする「脱出を伴う内痔核」に効能・効果を持つ局所注射用配合剤で痔核への投与にあたっては「四段階注射法」という独特な手法を用いて投与いたします。

非観血的に病変組織を硬化退縮させることにより、重度内痔核の脱出と排便時出血を消失させます。

全国10医療機関の共同研究で結紮切除術(手術)と比較検討したところ、手術適応とされるⅢ、Ⅳ度で、28日後の脱出の消失率は手術と同程度であり、1年間の再発率は16%でした。

合併症としては硬結、疼痛、排便困難、排尿困難、浮腫などが見られ、副作用としては注射2週間後までに発熱が7%に見られたと報告されています。

今後、安全性や効果の持続性の検討が必要ですが、適応を選び、合併症を来たさぬように、また、十分な効果が得られるように注射手技に注意しつつ行えば、今まで手術が必要とされたⅢ、Ⅳ度の脱出内痔核に対して有用な治療の選択肢となり得ます。

 

当院ではイボ痔に対して無痛剤を配合した
ジオンによる硬化療法(ジオン療法)をおこなっております

 

 

■イボ痔に対するジオン療法について (当日または数泊での退院)

 

▼ジオン療法の診察時間

 

火曜日午前に渡瀬院長、土曜日午前に渡瀬院長(1,3,5週)、野田医師(2,4週)が肛門疾患の診察をおこなっております。

 

▼当院の痛みの少ないジオン療法

 

ジオン療法

ジオン療法は直接痔核を切除する根治術に比べて明らかに術後疼痛が軽減されます。 また当院では無痛剤を配合したジオン注射を選択しており、術中、術後の痛みを最小限になるように工夫しております。

当院でのジオン療法は一般病床を利用して行っており、当日および数日退院が選択いただけます。

当院では原則麻酔はおこなわず(無麻酔)、肛門の狭窄が強い方などに限り局所麻酔(歯医者さんでおこなう麻酔)を使用した軽い麻酔をおこなっています。

ジオンを正確に(4点注射法)注射するには専門的な技術を要します。大腸肛門病学会に所属し、ジオンによる四段階注射法講習会を受けた医師(内痔核治療法研究会のWebサイトに記載されています)にしか施行できません。

当院では渡瀬、野田医師の2名が資格を持っております。
 

 
 
 
 

いぼ痔の治療には『薬を塗る』、『切る』以外に、痔核(痔そのもの)に『注射を打つ』という選択肢があります。

薬で治らなければ、すぐに必ず手術が必要という訳ではなく、痔核に専用の薬を注射することで改善が得られる場合があります。

40年以上前からパオスクレーという薬があり、その成分はフェノールアーモンド油で、痔核に注射することで静脈瘤様変化を起こしている血管を圧迫閉塞させて止血し、次第に痔核を縮小させ、硬化させて小さくするというものでした。適正な場所に投与すれば副作用も少なく、80%くらいの確率で止血できますが、残念ながら、出血量がかなり多い痔核などでは効果が出にくく、止血効果は期待できても縮小効果は低いことから、半年から1年くらいの間に再発してしまうことがあります。

2005年から日本で認可されたジオンという薬は、そのパオスクレーよりも痔核を小さくする作用が強く、痔核のタイプによっては切除する手術に匹敵する根治性が得られます。

日本で認可されたのは10年くらい前ですが、もともとは中国で50年くらい前から使用されていた『消痔霊(しょうじれい)』の添加物を一部改良したものなので、既に治療効果は確認されています。

有効成分は硫酸アルミニウムカリウム水和物・タンニン酸(Alminium potassium sulfate hydrate・Tannic Acid)で、その英名の頭文字を取って、ジオンを注射して痔核を硬化させる治療法のことを『ALTA(アルタ)療法』とも呼びます。また、薬を注射して効果が出る場所のポイントが4箇所(痔核の奥、手前、真ん中の深い所と浅い所)あり、その4箇所に適切な量を注射していくことから、『四段階注射法』とも呼びます。

ジオンを注射すると、無菌性炎症(細菌感染などではない炎症)が起こり、それを治そうとする身体の反応(組織修復過程の肉芽形成や線維化)によって痔核は硬くなって縮小します。その反応は約半年かけて起こりますが、注射したその直後から、急性の炎症反応の影響(血管透過性の亢進、局所血液の濃縮など)で血流が停滞し、注射当日から数日で出血は減り、早期に効果を実感できます。

パオスクレー同様、適切な投与方法を守れば、大きな合併症・副作用は少ないのですが、パオスクレー以上に薬の効果が強く、炎症に対する身体の反応の結果、一時的に硬くなり過ぎて違和感や疼痛を感じたり、表面の粘膜が荒れて、痔核の出血は止まっても、荒れた粘膜からの少量の出血が続くこともあります。

ただ、ほとんどの合併症・副作用は、少し我慢して塗り薬などで様子を見ると、自然に治るものが多いので、そういう点でも、切除による手術より負担が少ないと言えます。 

治療に際し、特殊な投与技術(四段階注射法)や、合併症・副作用に対する対応能力・知識が必要なため、決められた講習会を受講した専門医でなければ治療が出来ないことになっております。

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 


▼温水洗浄便座の誤った使い方をしない

 

温水洗浄便座は、今や日本の誇れる文化の1つとなっており、確かに、弱めのモードで5秒くらい使用し、優しくトイレットペーパーでふき取ることは良いことです。

しかし、診察をしていると、非常に強いモードで長い時間洗浄し、さらにトイレットペーパーで何度もふき取る方、浣腸のように肛門の中にまで水が入るように当て続ける方などがかなりおられることが分かりました。

極端な表現になりますが、犬や猫など動物は、排便後に完璧に肛門を清潔にすることはありませんが問題はなく、病気にもなっていません。

社会生活の中で、排便後、ふかずにそのまま、という訳にはいかないと思いますが、過度の洗浄により、肛門部の皮脂も洗い流されて乾燥し、かゆみや肛門の知覚異常をきたす場合があります。
 

 
 
 

▼トイレに長く座らない




 
トイレに長く座らない

通常の椅子に座った状態と違い、たとえ便を出すように力を入れていなくても、肛門むき出しの状態で便座に座る体勢は、ただ座っているだけでも肛門に負担がかかっています。

痔などの影響で、便がないのに便を出したいような感覚がする、あるいは、便秘は悪いことで1日最低1回は排便をしなければならないと強く思い込み、30分や1時間以上もトイレで頑張るという方や、トイレで読書をしたり、スマホをいじったりする方も多いと聞きますが、トイレの便座に座る時間は、目標5分以内です!

 

 
 
 

▼暴飲暴食をしない


 

いろいろと楽しみや付き合いもあると思いますが、極端な暴飲暴食は下痢の原因となり、当然、肛門には負担がかかります。

また、アルコールは出血・むくみを悪化させるので、控える方が望ましいです。
 
 


肛門の病気は、排便と密接に関係します。
排便が良好であれば、肛門の病気になる可能性も非常に低くなります。

排便を良好にするには、ストレスをなくし、規則正しい生活をし、理想的な食生活を送って身体を冷やさないことが大切ですが、現実的には全てを満たすことは難しいと思います。

でも、トイレに長く座らない、暴飲暴食をしない、温水洗浄便座の誤った使い方をしない、という3点は、すぐに実践できると思いますし、実践すべきです。


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  

■ 渡瀬 誠 院長   [プロフィール]



■ 野田 裕子 医師  [プロフィール]

 
2001年
 
大阪大学医学部医学科卒業
2001年
大阪大学医学部附属病院 旧第一外科入局
以後、大阪大学医学部附属病院、大阪労災病院、大阪警察病院などで消化器・一般外科、心臓血管外科の研修を経て、
2011年
大阪中央病院 外科
2013年
大阪北逓信病院 外科・肛門科 医長
2016年
大阪中央病院 外科・肛門外科 医長
2017年
よどがわ内科クリニック副院長
 
 
 

資格・所属

 

  • 日本大腸肛門病学会専門医(Ⅱb(肛門科))
  • ジオンによる四段階注射法講習会終了(内痔核治療研究会)
  • 日本外科学会 専門医・指導医
  • 日本消化器外科学会 専門医
  • 消化器がん外科治療認定医
  • 日本臨床肛門病学会所属